「ミント、はじめての職場で」
生後2ヶ月で我が家の家族になったミントが、6ヵ月の時から初めて勤務したのは、お年寄りの「デイケア(日帰り通所施設)」でした。
「アニマル・セラピー」には、施設の中で動物を飼う「飼育型」と、ボランティアなどが動物をつれて施設を訪れる「訪問型」があるのですが、施設の中で動物、とりわけ犬を飼うのはとても大変なことですし、ボランティアさんの訪問では、対象者のことが充分に理解できていないと、思い切った関わりが持てません。私が行っていたのは、その中間の形で、施設職員である私が毎日自分の犬を連れて出勤するという「通勤型」?とも呼べる形です。飼育のための施設への負担も無く、施設のリハビリ専門職として、普段から対象者のニーズや好みや性格を押さえた活動を提供している私が行うことで、より踏み込んだ効果の期待できる関わりができていたのではないかと思います。
それでも、犬の好きな人でも接し慣れないとなかなか馴染みにくい大型犬のミント・・・
はじめはどう接してよいのかとまどいがちだったお年寄りやスタッフも、時が経つにつれ、徐々に馴染んで、傍に居ることに違和感がなくなってきました。セラピー犬としてはまだまだ修行中の身でしたが、デイケアに集まるお年寄りとふれあいながら、いろんなことがありました・・
足元で寝そべるミントの腹の下に両足の先を差し込んで、「あぁ〜ぬくい・・・」と目を細めるオフクさん。
うつむいて、いつも寂しそうな目をしているけれど、そのお膝にミントがちょこんと頭を乗せると、とたんにくちゃくちゃの笑顔になるフサコさん。
「こわいよー、あっちやってー。」と言いつつも、正面でおすわりして首をかしげながら尻尾振るミントに思わずニンマリと笑ってしまうヒサコさん。
寄って来られるとダメなんだけど、サークル(柵)に入ったミントを何とか一度撫でてみようと奮闘し、差し出した手をペロンとなめられて、泣き笑いするキヨコさん。
無関心な様に見えるのに、ミントの姿が見えないと、「おや、今日はお連れさんは?」と必ず聞いてくるシゲコさん。
「ミントは賢いねぇ。うちで昔飼ってた犬はねぇ・・・」と、思い出話に花を咲かせるカズコさん。
「お手」に「おすわり」「ふせ」に「待て」、ボールを投げて「取って来い」、「バーン!」と撃てば、「バタッ、ヤラレター」と死んだふり。ちょっぴり怖くて触れないけど、ミントの芸にはいつも大喜びのカンタロウさん。
「あれこれやらせて、褒美はたったそんだけかぁー、ケチな主人で気の毒やナァ〜」と、ミントの頭を撫でるエイコさん。
ミントの差し出す「お手」に、麻痺して硬くなりかけた手を伸ばし、肩を揺すってしわくちゃ顔で笑うミヤコさん。
各々、かくれてこっそりオヤツをやりながら、なんとかミントをてなずけようとしているスタッフたち・・・
特別なことなど何もせず、ただそこに一緒にいるだけ。
それでも、好きな人にも苦手な人にも、その人なりのふれあいがあり、笑顔がありました。
あれからもう8年、今でも、みなさんのあのステキな笑顔が浮かんできます・・・
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